2015年09月07日

目でものを見ない体験

 この夏不思議な場所に出向いた。暗闇の中に入り込んで、一時間半という長い時間を過ごしてみたのだ。暗闇といっても半端な闇ではない。手を伸ばしてもその距離はわからず、目をならしても薄明がやってこないほどの真の闇。
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 たまたま美容室で小耳に挟んでさっそく申し込みをしたのは、ダイアログ・イン・ザ・ダーク。案内人は視覚障害者。会場の中では健常者と障害者の立場が逆転してしまう画期的な催しだ。すでに、ヨーロッパでは官・民がサポートしているときく。
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 最初に人工の闇の中で、八人の仲間とアテンド二名が、ニックネームを含めた自己紹介をした。この時、互いの顔は知らぬままで、声のトーンだけで必死に名を覚えようと試みる。たまたま順番が最後だった私は、上を見ても下を見ても何も変化のない真の闇に驚愕して鼓動がどんどん早くなってしまっていた。このまま一時間以上保てるのだろうか。パニクッてしまった時は、どうなるのか? それを正直に告げると、アテンドさんが、「大丈夫ですよ。何かあった時はすぐに中止できますから」とそれは爽やかな声で答えてくれた。
続いて、三名ほどの仲間が「大丈夫よ」「私も同じよー」「一緒にゆきましょう」と声をかけてくれた。その声が余りに暖かく聞こえたので、さて、出発。
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 テーマは、夏休み、おじいさんの田舎まで行こう、という内容で人工的な川や丸太の橋などを杖で叩いて距離間を掴み、先に進んで行く。私の場合は、今回二度目の体験という姉御肌の女性の肩を貸してもらい、何とか先に進めたというところ。
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 道中、縁側に座ったり、椅子にすわったりした時、私は顔を上向き加減にして顎を小刻みに揺すっていた。テレビで見るスティービー・ワンダーがそうしているように。偉大な歌手を思い浮かべてまねをしたわけではなく、せめてもの自分の居場所の確認。「ここに私は存在しています」という確かな実感が欲しくて顎を振っていたのだ。実際、一種の透明人間とも言えそうな不安定要素の原子に囲まれていたから。
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 それに、もうひとつ。会場にいる最中、私は終始目を閉じていることにした。目を開いていると見えないくせに、見よう見ようと目に力が入って疲れてしまうからだ。他の仲間たちは、ほとんど目を開いていたと言う。閉じることは、ひとつの器官を閉じそうな気がして却って怖い、と。長時間の声だけのふれあいの後、明るいところで初めて顔を見せ合った時の感激はなかなかのもの。もう一度ゆけば、別の闇を体験できるはずだ。
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posted by アンジェリカ at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 立木アンジェリからのお便り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする