
「座して死を待つつもりはない」という言葉は流行語にはなるかもしれないが、記者達の質問を受けている時の本人の顔がアップされると私は胸が痛くなった。その目は、それまでの自身みなぎる慎太郎氏のものではなく「寄る辺ない子供、それも不安に怯えている」目だったからだ。もちろん石原氏は若い時から瞬きを病的に繰り返すチック病でもあったのだから、それが表に出てきたことなのかもしれないが、年をとることとはこういうことだ、と思わざるを得ないころが哀しかった。

なぜか、慎太郎氏には生涯スターであってほしいという無責任な要求がこちらにあって、病気を経ても意気軒昴な八十代であり「侍の心境で果たし合いに出向く」とまで言ったのだから、「よろしい。部下にまかせて知らなかったこととはいえ、自分が当時、長であったのだから、自分がすべての責任をとります。金はないが、牢獄でもなんでも入りましょう」みたいなことを言ってほしかった。

そうしたら小池さんも、父親の恨みは反故にして、「さすが石原さん。豊洲問題は別にしても、色々沢山良いこともしてくれたのだから許しましょう」みたいな風にいってくれたりして・・・。小池さんは無理でも、少なくとも都民達は溜飲を下げることができたのでは・・・と思ったり。

しかし、何ですね。石原さんは、まだ自分が風を呼べる人だと勘違いしていたので、巻き返しを図ろうと「現在の混乱を生んだのは、長である小池さんのひとり責任」としつこく声を荒げていたが、一歩離れてみれば、ご自分の言っていることが矛盾していると気づいていないようでした。その前に、長々と「長である自分にひとり責任はない」と断言していましたから。若き頃からスターをしてきた人が陥りやすい罠ですか。
