購入してから二十年になるが、愛犬を残してひとり来たのは今回が初めて。林の中の一軒家なので、知り合いには「よく、平気で泊まれるわね」とあきれ果てられているが、「犬がいるから大丈夫」と答えていた。その相棒がいない。最近、夫が気力をなくして鬱っぽいので医者に行き薬をもらう代わり、もも太郎とのふたりだけの生活を試してもらいたかったからでもある。
朝から夜まで自由に使える一人時間は最高だった。まだ薄暗い五時に起床して、六時半、旧道にある聖パウロカトリック教会で朝ミサを受ける。何十年といたカルロス神父が高齢になりコロンビアに帰国したので、壮年でおられる高野哲夫神父に変わって二年。この高野神父の説教が素晴らしいのだ。明るくエネルギッシュでユーモアにあふれながら哲学的。日曜のミサで拝聴して、「ああ、日本人にも、こんな素晴らしい方が」と感激していた。今回、わかったことだが、三年間、ハンセン病棟におられ、刑務所に行かれることも仕事のひとつだとか。だからこそ理屈ではなく、心の奥底に響いてくる何かがあるのだと納得した。
その後は、旧道を上り碓氷峠に。ジョン・レノンが通い詰めた見晴台に。雨の日には途中でイノシシの子供二頭に出会う。怖さよりも愛らしく、地元の人は「うりぼう」というらしい。そのあと、浅野屋さんで釜から出てきたばかりのクッペを買い、テニス・コートを横切り万平通りを通って脇田美術館を横目に自宅へと。午後は、ピッキオの仲間たちとウォーキングをしながら自然観察。夕暮れになると五十肩完治めざしてトンボの湯へ。中国の方々は、日本人と恥の感覚が違うのでかなり戸惑うが、夜になるとそれも闇の中。おかげさまで、ほんとうに贅沢な時間を過ごし、生き返ることができた。
一方、パートナーの方も何とか無事で、もも太郎との規則正しい交流の中に、近所のお寺にお参りに行く、という新しい習慣が身についたようで安堵した。