
しかし落ち着いて、ふと、立ち止まれば、このエッセイを書かさせていただいているPTPLの理事長である勝田祥三氏こそが、かつて、Jリーグというものを日本全土に普及させた第一人者の仕掛け人であるのだから、恐れ多くも、私ごときが偉そうにサッカー談義などするのも恥じ入るが、それは棚の上に置かせて頂き、本題に戻ると、サッカー観戦の素晴らしさは知識の深さに関係なく、見る人が揃って素人監督になり、いっぱしの意見を持っており、それを臆面もなく口に出来るというところにあると思うのだ。ジーコの頃、代々木や埼玉のスタジアムに何度か通うようになって実感した。

実際、今回の試合の後半、ペルギーが急に勢いずいてきた時、「西野さん。早く。早く。本田サンをだしてよ。そのために、ポルトガル戦で体力温存させたんでしょ」「ほらほら、時間がなくなる。二匹目のどじょうはいないって」「もう、西野さん。延長戦のことなど考えないで。ホンダを出せー」などと夢中になって早口で解説し始め 「静かにしてくれよ」と夫に止められたほどだ。

いずれにしても、グッと熱くなり、涙が滲んだのも何度か。こんなに熱くなったのも、ソチオリンピック、浅田真央ちゃんのフリーのあの演技以来のような気がする。人は、死にものぐるいになって歯をくいしばり、ひとつのことに全エネルギーを投入している時ほど美しいものはない。それこそが魂を揺さぶる。日本男児ここにありでしたね。
