その整理を一人でやっている。健康な方には当たり前のことだが、長年の脊髄狭窄症で、三キロの米袋を持つのがやっとの私だったのに、半日働いても、今はロコアテープを貼るだけで、なんとか保っていられるようになった。

ここにくるまでに、いくつも方法を変えてみた。整形外科から針、そして自分にあった整体師を求めて転々と。昨年の冬を境に、10年以上続けてきた整体をやめ、主治医でもあった参宮橋の内科医の指導のもと、矢追インパクトなるものを二週間に一度受け、毎日、ウオーキングに励んでみた。
矢追インパクトは、人間の本来持っている治癒力を高める注射で、日本ではあまり知られていないが、アメリカではオバマ大統領が保健省を通じて、その安全性を保証している。半年もすると、いつも腰のあたりにあった爆弾のような鈍い痛みがなくなっている日がある。先生に質問すると「骨を筋肉が 補強しはじめたんですよ」という答え。「いつか なおるかもしれない」という幻を見た気がした。

素晴らしい技術を持っている整体を、なぜ、やめたのか記すと、ごく、常識的なことではあるが、「狭窄症は治ることはない。生涯抱えてゆく持病」と言われていて、受けた後の二、三日から一週間は確かに爆弾は無くなっていてすこぶる快調なのだが、少し気をゆるめると、また元に戻ってしまっていたので、一念発起して、治療法を変えてみたのである。

そしてポールウオーキングの登場。昨年の冬、五十肩になり、ひどく苦しんだ。陣痛以外でも夜、一睡もできない痛さがあることを、恐怖とともに体験した。その時、いかに上半身のケアがなされていないことも実感した。たまたま軽井沢の若い友人に ポールウオーキングというものがあることを教えてもらい、調べて見ると、納得した。どうやら ウオーキングは腰から下が中心の運動で、ポールを使うと全身運動になるという。

朝、5時半から6時。台風ばかりきて雨模様なのに、はりきって扉を開く。六メートル道路には車も人もなく、まるで小さな滑走路のようでもある。そしてガラスばりのビルの一階は、姿勢をチェックするための大きな鏡。半世紀続いた昼夜逆転の生活は、これで終止符が打たれるのか。狭窄症の弊害が、限りなく少なくなるために、これからも試行錯誤は続く。
