日本の国益に関しては別として、少なくとも道徳という平均感覚を保持している人格が合衆国の指導者になったのだから。にもかかわらず2024年の次期候補筆頭にトランプはなっているとか。信じられないが、気持ちはわからなくもない。白人優位主義を誇りとして生きてきた人々が、黒い肌、黄色い肌が自分たちを押しのけて、大手を振って道の中央を闊歩するのが我慢ならないのだろう。

かつてBSドキュメンタリーで、一介のタレントだった頃のトランプの特集を見た。その時、話題作りのために、トランプタワーの玄関先で「 プーチン大統領が視察に来る」と嘘の放言をしてマスコミを賑わせていた。 だから妻の メラニアが、ファーストレディとして公の場に立った時、ミシェル オバマ の演説を盗用したとして、随分と笑い者になったことがある。私としては、それもまた売り込み戦略のひとつではないかと疑っている。

それにしても、なぜ、このような異質な男が大統領になってしまったのか。なぜ、ヒラリーは得票数で大幅に超えたのに「選挙人」という仕組みで落選してしまったのか。
そもそも「選挙人」とは何なのか。 それは、「抑制と均衡」の一部であるという。つまり単純に「多数決」ですべてが決定するシステムではなく、多数派を牽制し、少数派を擁護するための仕組みだという。それ故に「ねじれ」が生じて多数派の専制を防ぐということらしい。

この四年間、アメリカを第二の故郷としている一族の血の流れのせいか、テレビや新聞でトランプの暴挙を耳にするたび顔をしかめてきた。けれども、もしも、夫人のあの演説の盗用が本当に戦略のひとつだったとしたら、トランプという人物は、認めたくはないが、稀代の天才的頭脳の持ち主と言えるかもしれない。あれ以来、メラニア夫人は同情こそされるが、マスコミの餌食になることは皆無に近かったのだから。
