生前の夫に、一度として、このように声をかけたことはない。にもかかわらず、、、である。そして思うのだ。この華麗な巨人がのっしのっしとやってくる春の到来を告げたくなる相手は、この世でたった一人。残念ながら、あなたしかいないんだ、と。
男尊女卑の典型だった夫が亡くなり2年目の春。ようやく気持ちが落ち着いてきたのか、「 嗚呼、あんな人でも、私にとっては、ただ、ひとりの人だったんだ」 と認めなくてはならない悔しさのその裏には、寂しさと愛おしさとありがたさで胸がはち切れそうになる程熱くなる。
また、春は入学の季節。孫の女の子が子供時代からの私立を離れ、早稲田大学に推薦入学をした。なんと亡くなったジジのようにマスコミの仕事に就きたいと決めている。今時の女子はキチンと自分を持っている。地球はおかしくなりつつあるが、それのにも負けず女子たちの世界は広がり、男尊女卑などどこ吹く風だ。同じ女として羨ましくもあり素晴らしいことである。半世紀後には、どんな地球になっていることだろう。
神宮外苑の銀杏並木伐採に関しては、無念のあまり、坂本龍一氏の記事に涙したが、桜に関しては、少なくとも、どんな家の壁の片隅の桜たちも生きていて欲しい。これから後、どれほどの数、「 お父さん、桜が咲いたよ」 と呟いて、この世を去るのかわからないが、今年の桜は、ひどく美しい。