2023年04月05日

華麗な巨人-桜

 三月半ば、最初に街中に桜の花が咲き出したのを目にした時、思わず「お父さん、桜が咲いたよ」 と呟いていた。それから日が過ぎて初台遊歩道や明治神宮などで、幽玄の世界へと導かれ、口をポカンと開けたまま満開の桜を見上げたり、枝先の薄桃色の匂いを味わっては「 お父さん、桜が、桜が、咲いたよ」と何度、声をかけたことだろう。
名称未設定 4.jpg
 生前の夫に、一度として、このように声をかけたことはない。にもかかわらず、、、である。そして思うのだ。この華麗な巨人がのっしのっしとやってくる春の到来を告げたくなる相手は、この世でたった一人。残念ながら、あなたしかいないんだ、と。
名称未設定 2.jpg
 男尊女卑の典型だった夫が亡くなり2年目の春。ようやく気持ちが落ち着いてきたのか、「 嗚呼、あんな人でも、私にとっては、ただ、ひとりの人だったんだ」 と認めなくてはならない悔しさのその裏には、寂しさと愛おしさとありがたさで胸がはち切れそうになる程熱くなる。
名称未設定 1.jpg
 また、春は入学の季節。孫の女の子が子供時代からの私立を離れ、早稲田大学に推薦入学をした。なんと亡くなったジジのようにマスコミの仕事に就きたいと決めている。今時の女子はキチンと自分を持っている。地球はおかしくなりつつあるが、それのにも負けず女子たちの世界は広がり、男尊女卑などどこ吹く風だ。同じ女として羨ましくもあり素晴らしいことである。半世紀後には、どんな地球になっていることだろう。
名称未設定 3.jpg
 神宮外苑の銀杏並木伐採に関しては、無念のあまり、坂本龍一氏の記事に涙したが、桜に関しては、少なくとも、どんな家の壁の片隅の桜たちも生きていて欲しい。これから後、どれほどの数、「 お父さん、桜が咲いたよ」 と呟いて、この世を去るのかわからないが、今年の桜は、ひどく美しい。
名称未設定 5.jpg
posted by アンジェリカ at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 立木アンジェリからのお便り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック