
実際のところ、これまで旺盛な食欲で、年がら年中ダイエットを掲げて炭水化物抜きの三食を重ねてきた。暴飲こそしてこなかったが、暴食の限りを尽くして、哀れ胃腸はすっかりと弱っていたのだろう。

朝、腰痛のリハビリ最中に、胃と腸のあたりを丁寧に撫でて指先で強く押してみると、心臓と同じように、毎分、毎秒、真剣にコツコツと仕事をしてくれているのがわかる。その生きている証のぼにょぼにょ感触は、なんとも愛おしく、思わず詫びを入れたくなる。ごめんねえ。これまで、あなた達のこと、ちっとも大切にしてこなかったもの。

二週間ほど前に、かかりつけの医院で、区の無料健康診断を受けた。そこで、私が「これまでなんともなかったのに、急にがくりと来るなんて、、、」と愚痴をこぼしたら、八十代の尊敬するその医師は、ピシリと「それが年をとるということだよ」とおっしゃった。

その一言で目が覚めた。
いよいよ、健康寿命とそうでない生活との分岐点に差し掛かったのだと。
人は、皆、何らかのこと、それが交通事故であったり、階段で転んだりして、それまで口もきけず、黙々と務めを果たして耐えるだけ耐えてきた臓器や骨や筋肉が、本人の心に「もう、限界です」と訴えかける時期が到来するものだと。今回の出来事が、半年後、ありがたい体験であったと振り返る日がきますように。
