まずは写真の説明をさせて頂く。黒白の写真が、今から七十年近く前のいとこ会。
母方の祖父が、毎年のように孫を集めては、上山田温泉に連れて行ってくれた時の思い出の写真。左側から姉と兄。一番、右が末っ子の私である。我が家では、父が東京で事業を拡大していたので、ほとんど松本の実家にはおらず、どこかに連れて行ってもらうことなど皆無だった私達兄弟にとって、年に一度の楽しみだった。

その次のプールの前に立っている五人は、私たちの子供達。右側の一番小さな子が私の一人娘である。それが、45 年前のこと。

次が、今年のいとこ会。おのおの結婚して、お嫁さんやお婿さんも加わってくれたのだが、、、それが、こんなに大勢に。出席できなっかった私のために、兄と姉が用意してくれた写真である。

ホテルで開かれた会の冒頭に、今年、八十才を迎える兄が「この会を開催したのは、母方の祖父が、毎年、いとこ会をしてくれた楽しい思い出があるからです。僕が、こうした会を開催するのは、これが最後です。あとは、皆さんが、先頭に立ってして下さい」と話したと婿が言っていた。そして、もう一人の祖父、ハーリーの冒険談も愉快に話してくれたらしい。

写真を比べて胸が熱くなり、脈々と静かに繋いできた血縁の不思議さに、しばし言葉がでなかった。これまで私たち兄弟は仲睦まじい関係でなかっただけに、この年齢になって、真実、「兄弟っていいものだなあ、、、」と思わずにいられない。そして父との強い絆を背景に、生意気ばかり言ってきた私であったが、少しは末っ子らしく可愛げのある妹にならなくては、、、と気持ち新たに想う。なんといっても二人は、年を重ねる先輩なのだから彼等のあとをついて行こう、と。

この年齢になって、ようやく感じることができるようになった素晴らしいプレゼントの箱。開けば、パンドラの箱と違って、孤独からの、孤立からの解放を意味していた。
年をとることも悪くない。