
けれどもこの一年は思い返せば「観念した年」と言える。つまり、これまでの自分は、まだ若い、若い、と思い込もうとしていたが、遂に自ら老いの出発地点に到達してしまった、と認めざるを得なくなり、その覚悟ができたからだ。そのため、随分と散財もした。外出もままならなかったので、老いの準備用品をネットで買いまくった。まずは地面をしっかり踏み締める為の5本指の木綿の靴下10足から始まり、ネックウオーマー、手首、足首を温める為の品5枚ずつなどなど。

実際に浦島太郎の玉手箱をあけたような免疫力の衰えだったので、電車やレストランの冷房に耐えきれず、震え出しては微熱が出た。秋になって体力が少し回復してきたので、民間療法の矢追インパクト注射を週一度始めて、二ヶ月近くなる。現在では、体力が半分ほど回復してきたような気がする。

先日、和田秀樹著の「八十歳の壁」という本を改めてペラペラめくってみた。昨年、読んだ時は、他人事のようにしか思えなかったが、今回は違った。ひとつひとつに納得がいった。私の場合、脊柱管狭窄症と違い「すべり症」という厄介な外科手術をするのではなく、この年齢が故に、違う道を選択することが間違っていない、というお墨付きを貰ったような気すらした。

しかし、老いの入り口に佇んで思うことの中で一番触れたくないことを勇気を出して記せば、それは愛犬シンバのこと。散歩が嫌いなので、体重が8キロ半ある。どれだけ私の腰の負担になっていることか。けれども心を埋めてくれる大切な相棒だ。寝姿を見ているだけで心は落ち着いてくる。もしも手放したりしたら、私の神経は瞬く間にやられてしまうだろう。こんな時、なぜか浮かんでくるのは「アンパンマン」。
