
アメリカを第二の祖国として育ってきた私としては、ドナルドトランプが再びクローズアップされてきた時に、どんなに苦々しく思ったことか。あれほど酷いことをしてきて、どうしてまた。アメリカは狂ってしまったのでは。これまで世界の良心を追いかけて、理想の指導者たらんと自認してきた合衆国は、どこに消えてしまったのだろう。

幼少期、父から聞かされてきたのは「たとえ何万坪のお屋敷に住んでいても、公園で遊んでいれば、ボロボロのウンチにまみえたトイレに入らなければならなかった。それが我々、カラーズへの扱いだった」という言葉。父は、それを子供心に体感してきたのだろう。故に、トランプの親衛隊は、本音を隠していても人種偏見を生きがいとしている哀れな白人層だと。

けれども最近、トランプ人気はそれだけではないということがわかってきた。競争相手だったデサンテイスが 、あっという間に撤退した時はがっかりしたが、彼もまたトランプ支持者にまわるというので呆れ果てた。きっと、二人で密約を交わしたに違いないと勘ぐりたくもなる。実際、副大統領の椅子を狙っているらしい。

トランプ人気は、日本風に言えば、本音と建前の本音の部分だけで堂々とやってのけるからこそ喝采を浴びているのだ。彼らは栄光の大国であろうとする歴史に疲れ果て、とうとう振り子が逆のほうに動きだしている。
一方、ゴールドラッシュの時代。祖父は、アラスカ鉄道建設の功労者として、名誉市民に推挙され、シアトル市で日本人向けの銀行を開設していた。多人種に、それほどまでにふところが深いのもアメリカ合衆国の真の姿である。写真は、百七年前の父。表はポストカードになっている。
