「お誕生日 おめでとう。悠々クラブにようこそ。仲間入りしてくれて嬉しいです。このクラブは、人生運転の達人になれる男女しか入会できません。たくさんの山あり谷ありですが、嘆きを糧に青空に抱かれて スマイルで歩いて行きましょうね」

姪も叔母のたわごとに合わせて「悠々クラブに 入会させていただき感謝です」なんて返事をよこしていた。それというのも、この夏、階段を踏み外し、転倒、骨折が完治してからずっと重い気持ちで日々を送っていた。あれは不注意というのではなく、膝崩れなど身体的衰えの兆候であったと。認めたくなくても、認めなければならなくきつかった。

思えば、これまでの私は「いかに若くいられるか」「いかに若く見られるか」がテーマの毎日だった。不謹慎なことを承知で記せば、電車やバスでも、カナリのお年寄りの隣には座らないようにしていた。老いオーラが、これ以上、乗りうつらないように。けれども自分も、遂にその限界値に至ったのだ。思い知らされた。般若心経である。

気持ちは追い詰められ、イライラして、小さなことでピリピリしていた。
そこで決断した。「若くいることを試す期間は終わった。今度は年を重ねるごとに、いかに小さな喜びを見出せるかが勝負だ」と。つまり、百八十度帆船のかじを切り替えることにしたのだ。手始めに、一日、三十分でも外に出ることにした。そこでこれまでぐずぐずしていた明治神宮 散歩が徐々に日課になっていった。次に、ベートーヴェンの第九をやり遂げたという合唱隊に興味を覚え見学に。初心者歓迎とあったので。

ところが何の偶然か、見学したのは65才以上の方々の合唱団だった。なんと平均年齢は80才だという。曲目は「流浪の民」。彼らの生き生きした様に惹かれて、さっそく入会を決めた。同じくらいの年齢の仲間たちといることの心地よさを存分に味わう。
これからは「今、生きていること」それ自体を楽しもうと思う。
それは、内面から湧き上がってくる陽光を味わうこと。
悠々クラブ 誕生の秘話である。笑。
