技術力は海外のショーにもでているので、変わらず素晴らしいが、その辛さを聞いているだけで、こちらも怖くなる。いつ、自分もなるかわからないからだ。その「ある日、突然になる」ということに関しては、花粉症ではないが、私にも別の体験がある。ある日を境に、高いところに登れなくなってしまったのだ。
それまで都庁はじめ京王プラザなど、副都心の最上階に出向いて夜景やら楽しんでいたというのに、数年前の春先、身体の調子が悪い時に、気分転換になると思い、横浜マリンタワーのエレベーターにヒョイと乗ってみたら、動きだした途端、立っていることができず、その場にしゃがみ込んでしまった。私 ひとりだけだったので、他人様に迷惑をかけることはなかったが、屋上に着いた時は、冷や汗と震えとめまいで打ちのめされ、壁つたいによろよろ歩いて、下りのエレベーターを待った。その数分の 時間の長かったこと。
それ以来、高層ビルを見上げるだけで怖くなる。つまり、一瞬にして、身体が硬直して、数年前の 現体験に戻ってしまうのだ。これがパニック障害かな、と思ったり、「高所恐怖症は、落ちることを想像するからだ」との言葉を思い出す。
そこで考えた。まず、ケーブルTVで、往年の「スーパーマン」を何度も何度も見る。クラークケント扮する クリストファーリーブが空を飛びながら、腕を伸ばし、こちらをチラリと見て微笑む。あの微笑に、どれほどしびれたものか。次に「スパイダーマン」。蜘蛛の糸で、ビルとビルの谷間をブランコのように自由自在に躍動する。そして「バットマン」。それらの映像が 脳に焼き付くまで見ようと試みた。
おかげで、今も、高いビルを見上げると、まだ、ゾクとくるが、パブロスの条件反射のように、マントを背後になびかせたカッコイイ、スーパーマンがそこから飛び出してきて、悠然と空を飛んでいる映像が浮かんでくるようになった。
それを美容師さんたちに話すと、みなさん大笑いしてくれる。なんとか花粉症も、このように治るマジックはないものか。二十名いる社員の十名が花粉症だという。


